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2024/11/26

1028年5月~10月

▼五月
 
春樹交神
 
秋葉48菩薩を奉る秋葉家では当然男子のみが交神を行い、
交神を行った男子のみが当主となる。
 
兄弟が存命の場合は、長男、若しくは素質のより高いものが当主となり交神を行う。
 
これは変わることのない秋葉家の血の掟なのだ。
 
春樹「…という事を知っているのかな?」
明香里「うん、知ってるよ」
みちる「もちろん!」
 
春樹「ほほぅ、ならばなぜ交神表を眺めているんだ?」
 
ちょうど交神の準備をしていた春樹のそばでは、
明香里とみちるが男神の交神表を眺めてなにやら話し込んでいた。
 
明香里「なんでって、眺めちゃいけない?」
みちる「そうだよ!ただ、眺めてるだけだからね!」
春樹「どうせ、お前達は交神を行わないのだから眺める必要はないだろう」
 
春樹の何気ない一言に二人はムッとして、途端に不機嫌になった。
 
明香里「あ、その言い方ムカつくなー」
みちる「いくらお兄でもひどくない?」
明香里「兄さんがどう考えてるか知らないけど」
みちる「ウチ等だってなんも考えてない訳じゃないんだからね」
 
二人はそこで言葉を区切り、息を合わせて
 
明香里、みちるどうせ必要なくて悪かったわね!
 
そう怒鳴ると二人は部屋を出ていってしまった。
後には何がいけなかったのかわからずに呆気にとられた春樹が残った。
 
春樹「なんだったんだ?」
 
近くで春樹の手伝いをしていたイツ花も、
このやり取りには苦笑いをせずにはいられなかった。
すると、入れ違いで阿弥が部屋に入ってきた。
 
春樹「義姉さん、寝てなくて大丈夫なんですか?」
阿弥「ええ、今は大丈夫。それより、明香里とみちるが怒ってたけどどうしたの?」
春樹「ああ、それが…」
 
春樹は阿弥に事の顛末を話した。
と、言っても春樹には明香里とみちるがなぜ怒っていたのかわかるはずもないので、
やりとりについてを簡単に話しただけであった。
 
阿弥「そんなことを言ったの…。いくらあなたの家系が男子続きだったからって、デリカシーなさすぎでしょ」
春樹「でりかしー?」
 
キョトンとしてる春樹を見て溜め息をつく阿弥。
男子家系が続くとここまで割り切ったような考え方ができるのか、と改めて呆れてしまった。
 
阿弥(この子には、生まれた時から子を残せない事を決められた一族の気持ちは理解できないのね)
 
男子なら素質によって子を残せるかもしれない。
しかし、女子は如何に素質が高かろうが、子を残せないことが生まれた時から決定付けられている。
 
阿弥はそんな春樹に対して、憤りよりも哀れみに似た感情を覚えた。
子を残せない家族の気持ちに寄り添うことができない、家族の苦しみに共に悩む人の優しさを知らない。
 
阿弥(たとえ、鬼を斬ることが人生であっても、それが人を捨てていい理由になんかならないのに)
 
春樹もまた掟に縛られた一族なのだ。
 
阿弥「春樹、あなたは明香里とみちるが怒った理由がわからない?」
春樹「はい、なぜ二人はあんなにも怒ったのか」
阿弥「二人はね、子を残せない事がさも当然かのような事に怒っていたのよ」
春樹「そんなことは仕方がない事じゃないですか。明香里もみちるも女なんですよ」
阿弥「そうね、女は秋葉48菩薩様とは交神できないものね」
 
阿弥「でも、それを当然として受け入れるのはとても難しく、とても辛いことなのよ」
 
阿弥は春樹に懇々と諭した。
春樹に真の意味で通じるかはわからない、それでも伝えることは無駄にはならないだろう。

女として生まれた事を恨んだり後悔したりする生き方などあっていいはずがないのだ。
 
 
と、急に阿弥の顔色が悪くなり、倒れるようにその場に崩れた。
 
春樹「義姉さん!どうしたんですか!?」
阿弥「だ、大丈夫…少し気分が悪くなっただけだから……」
春樹「大丈夫じゃありません!今、誰か呼んできます!」
 
春樹は急いで部屋を出て人を呼びにいった。
 
春樹「義姉さんが!今すぐ来てくれ!
 
イツ花や、蒼天達家族が駆けつけた時点ですでに阿弥は息も絶え絶えとなっていた。
イツ花は急いで阿弥を布団に寝かせて漢方薬を飲ませようとしたが、その手を止めたのは阿弥自信だった。
 
阿弥「いいの、イツ花。自分の体なんだもの、もうこれが最後なんてこと自分でわかってるわ」
蒼天「姉上!最後だなんて言わないでください!」
阿弥「蒼天…無理を言わないで。もう起き上がることもできないんだから」
 
阿弥は軽く言ったようだったがその顔には今までの明るさはなりを潜めていた。


阿弥「蒼天、あなたに目が綺麗って言ってくれてすごいうれしかったよ。ありがとう」
女として秋葉家に生まれ、女として生きた。その目は眩いばかりに輝いていた。
 
「阿弥」永眠 享年1歳7ヶ月
 
 
▼六月、七月
 
白骨城にて二月に亘り討伐を行いました。
戦勝点を稼ぐという目的ももちろんあるのですが、
それともう一つ生まれてくる子の月を一月程ズラす為に篭ってました。
 
別に一月ズラす必要があるほど交神期間が近かったわけではないのですが、なんとなくです。
もう一月程ズラすと今度はちょい空きすぎかなと思うので七月で大人しく帰還します。
交神期間は空いても4ヶ月じゃないと人数が少なくなってしまうので、そこは考え考えやっていきます。
 
 
七月の討伐が終わり、帰還すると家に残っていた蒼天の具合が悪くなっていた。

 
阿弥の死のショックもあり先月から体調が優れなかったが、今月はついに体を起こすこともできなくなってしまった。

蒼天「姉上の仰っていたことは今ならわかるかもしれない」
春樹「え?」

横になっていた蒼天は不意にそう呟いた。
そばで看病をしていた春樹も思わず聞き返してしまった。

蒼天「いや、自分の最後はなんとなくわかるものなんだな…」
春樹「最後…」
蒼天「ああ、おそらくもう長くない。ははは…これだけ生きても死ぬときはあっさり死ぬものなんだな」

乾いた笑いを浮かべたもののその顔には悲壮感はない。

蒼天「春樹、あとは頼んだよ。妹達を大切にするんだよ」
春樹「はい、お達者で」



蒼天「おやすみ。みんな」
弟は姉を慕い、姉も弟を慕った。その血の繋がりは唯一であり絶対の絆だった。



第17代当主「蒼天」永眠 享年1歳6ヶ月


18代目当主には「春樹」が就任


▼八月


春樹の第1子「
弥彦」誕生

(゚∀゚)フフフ、ついに我が一族にもお出でになられましたね。
(゚∀゚)
モヒカン!モヒカン!モヒカン!

(´Д`)…それ以上にこの強面で愛称の妖怪博士という意外なギャップに思わず吹いてしまいましたよ

こんな外見でもまじめに敵である妖怪や鬼について勉強してるのに、ふざけ半分で妖怪博士なんて呼ばれ方をしてるこの子がなんだか不憫に感じてしまう。


明香里・みちる「ねぇねぇ、妖怪博士ーwwwww太鼓持ちについて教えてーwww」



(´Д`)そんな呼び方してるのはやっぱりお前達か……


(´Д`)お前達馬鹿にしてっけど、その子が今のところ一番素質高いんだからな。



ということで、弥彦が生まれたことによって奉納点も上昇しました。
前回に引き続きわりと早く上昇してくれましたね。


まぁ、素質バーは特に期待してないのでこんなもんですよね。


「こんなもんってなんですか!レディーにむかって失礼ですよ!」

(´・ω・`)いや、レディーちゃいますし。というか、素質バーは前回から一個も増えてないから


「外面とかより内面で勝負ですよ!」

(´・ω・`)内面も割とグッダグダですぜ?


「なんなんですかさっきから!それでもこの私を信奉する者なんですか!?」

(´・ω・`)うーん、正直自分はあなたには特に期待しておりませんし。


「なっ………!!!」



▼九月

孫六交神

孫六「????え?自分が交神するんですか?」
春樹「そうだけど、何か問題があるのか?」


春樹から交神を命じられた孫六は素っ頓狂な声を上げてしまった。
なぜなら、春樹はまだ子を一人しか生していない上に孫六はまだ若かったのだからだ。
序列からいえば当然春樹がもう一人子を作ってもおかしくなかった。

春樹「まぁ、なんだ、俺も年だからな。もう交神をする余裕もないってことだよ」
孫六「ですが、交神は健康には影響を及ぼさないはずでは」
春樹「そういう細かいことを突っ込むなよ…。要は俺も先が長くないから今のうちに次期当主に交神しておいてもらうんだよ」

次期当主という言葉を聞いてもピンと来ずにポカーンとしている孫六。

春樹「まぁ、いきなり言われてもわからんと思うがそういうことだ」
孫六「え、あ、いきなりすぎてちょっと話が飲み込めなくて…」
春樹「だーかーらー、ウチは当主が死んだら次の当主は年長の男が担うんだよ」
孫六「あ、ああ、なるほど…いやいやいや、そんな簡単に納得できませんよ!」

まったく要領を得ない孫六に対して春樹はそれ以上の説明を放棄した。
これ以上どれだけ言葉を重ねても、すぐに理解しろというほうがどだい無理な話なのだ。

春樹「じゃあ、そういうことだからよろしくな」

そういうと春樹はさっさと部屋を出て行ってしまった。
あとに残された孫六はわけもわからずただ立ち尽くしてしまった。


春樹が廊下を歩いていると向こうから明香里とみちるがやってきた。


明香里「あ、言葉が少なくて融通の利かない馬鹿兄だ」
みちる「そのくせ、不器用で相手に伝えるのも下手くそな馬鹿お兄だ」
春樹「お前ら喧嘩売ってるのか?」


明香里「別にー」
みちる「なんでもないなんでもない」
春樹「ああ?」

春樹は二人の言葉を怪訝に思いながら、二人をスルーして部屋に帰っていった。
そんな春樹の背中を呆れながら眺めた。

明香里「本当、ウチの新当主様にも困ったものね」
みちる「当主って柄じゃないもんねー。お父さんより、多聞おじさんに似てるかも」
明香里「そうだね。さて、あたし達はかわいい義弟のフォローに行きますか」
みちる「きっといきなり言われて困惑してるだろうからね」

人の感情に鈍感で、自分の気持ちを伝えるのも不器用な兄に代わって妹達は困っているであろう孫六を助けるべく、部屋に入っていった。



▼十月
 
 
その日は目覚めると既に昼過ぎだった。
こんな時間まで寝てしまうとは情けないと思いつつ、体を起こそうと思ったが思うように起き上がれない。
床についた腕の力は自分の物とは思えないほど弱っていた。
どうやら、自分ももう長くはないようだ。
 
春樹「…生まれてからずっとがむしゃらに剣を振るってきて……それももう終わるのか」
 
そう言った時、部屋の襖が開いた。
 
明香里「あ、兄さん起きたんだ。体調はどう?」
春樹「ああ、十分すぎるくらい寝たから万全だ。今からでも討伐に出かけられそうなくらいな」
 
もちろん、それは嘘だ。
 
今、起きて明香里と話していることすらやっとだった。
討伐どころか、立って庭に出ることすら怪しいだろう。
 
明香里「ふふ、やめてよね。討伐に行って、途中で倒れたらみんな困るんだから」
春樹「そういえば、みんなはもう往ったのか?」
明香里「ええ、みちる、孫六、つくし、弥彦が出撃していったわ」
春樹「そうか。弥彦も初陣か…」
明香里「大丈夫よ、兄さん。みちるも付いてるし、孫六やつくしもいるし、心配いらないわよ」
春樹「いや、自分の息子がいざ鬼を斬る人生を歩みだしたかと思うと、やはり親として何も思わない訳じゃない」
 
たとえ一族の悲願の為とはいえ、自分が望んで子を生し、子を戦場へ送り出したのだ。
我が子を修羅道に落としたのは誰であろう自分なのだ。
 
明香里「自分の子供には全うに生きてもらいたいと思うのは誰でもそうだと思うけど」
 
明香里「それでも私は、ううん、私達は兄さん達が羨ましいと思ってるんだよ」
 
明香里「そうやって心配したり、将来を不安に思ったり、怒ったりできるのも子供がいるからなんだよ」
 
春樹「………」
 
春樹は今の今になってようやく妹達の気持ちを理解した。
 
自分はなんと愚かな兄なのだ。
妹達の気持ちを何もわかってやれなかった。
それどころか、その気持ちを踏みにじってきたのだ。
 
こんな自分が当主であって本当によかったのか?
 
大切な家族の心すらわからない様な愚かな自分がいったい何を導けるというのか。
 
明香里「…兄さん?」
 
春樹の沈痛な面持ちを見た明香里が心配そうに言葉を掛けた。
 
春樹「ああ、いや、なんでもない…。なんでもないんだ…」
明香里「なんでもなくないよ、すごい汗だよ?イツ花を呼んでくるね」
 
そう言って立ち上がりイツ花を呼びに行こうとした明香里を、春樹は止めた。
 
春樹「本当に大丈夫なんだ…。今はこのままにしてくれ」
明香里「兄さん……」
 
明香里は言葉に従いその場に留まった。
春樹の顔は今までに見たことないような思いつめた顔をしていた。
 
明香里「本当にどうしたの、兄さん?やっぱりおかしいよ…。私が変なこと言ったから怒った?」
春樹「いや、怒ってなんかいないよ……」
 
春樹「むしろ、謝るべきは俺なんだ。俺はどうしようもない愚かな兄だったんだ」
 
明香里「え?なにそれ…どういうこと?」
 
春樹の突然の言葉に明香里は動揺した。
謝られる心当たりがまったくなく、いったいなんの事を言っているのかわからなかったのだ。
 
春樹「お前達の気持ちを理解もせず、その心を傷つけただけだった。今になって、義姉さんに言われたことがわかった気がするんだ」
明香里「それって、私達に『どうせ』って言った事?」
春樹「ああ、あの時の不躾で不要な言葉を言って本当にすまない」
 
明香里(そんな事を今の今まで覚えてて、そんな事で後悔してるっていうの…?)
 
明香里(なんつー生真面目な人間なんだろ……でも…)
 
明香里(そうやって、少しでも私達のことわかってくれて、こうやって不器用なりに気持ちを伝えてくれた)
 
明香里の顔からは自然と笑みが零れていた。
わかったのだ。こんな兄が、こんな兄だからこそ、大好きなのだ。
 
明香里「ははは、そんなこと…はは、そんなの私もみちるも気にしてないよ…」
春樹「明香里…」
 
笑っていた声はいつの間にか涙声になっていた。
 
明香里「…大丈夫、全然そんなんじゃない…から…本当に…」
 
 
たぶん、この鈍感で生真面目な兄さんにはこの涙の訳なんかわからないだろうな
ほら、わけもわからず困った顔してる
でもね、そんな兄さんが大好きなんだよ
本当だよ
 
 
みちる「ただいまー!お兄ー、お姉ー帰ったよー!」
 
屋敷に元気なみちるの声が聞こえてきた。
 
明香里「あ、みちる達が帰ってきたみたいね」
春樹「ああ、そうみたいだな」
 
すぐにドタドタと廊下を走る足音が聞こえてきたと思ったら、襖が開いてみちる達が入ってきた。
 
みちる「あのね聞いて聞いて!あ、お兄また起きてる!寝てなきゃダメなんだよ!」
孫六「ただいま帰って参りました」
つくし「みちる義姉さま、そんな騒がないでくださいぃ」
弥彦「親父、体は大丈夫か?」
 
部屋に入ってくるなり思い思いの話をするのでしっちゃかめっちゃかである。
 
明香里「はいはい、一人ずつしゃべりなさいね…。まったく、みんな帰ってくると途端ににぎやかになるわね」
春樹「そうだな…。いい家族だ…」
 
みちる「なになに?なんの話してたの?」
孫六「お茶を入れて来ましょうか?」
つくし「あ、お茶ならあたしが入れてくるぅ」
弥彦「さっきまで疲れたって言ってたのが嘘みたいだな」
 
みんなの声が聞こえてくる
 
家族に囲まれたこの空間がなんと心地いいのだろう
 
 
春樹「ああ、いい風だ…」
 
明香里「え?なにか言っ

春樹は家族に囲まれ、静かに眠りについた。
不器用な彼が気付いたのは、自分を支えてくれた心優しい家族達の温もりだった。


第18代当主「春樹」永眠 享年1歳6ヶ月

19代目当主には「孫六」が就任


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